2017年10月2日月曜日

般若心経について

今回(10月定例)の投稿は、以前の投稿(「般若心経の写経」:2017.2.20)の続きで、般若心経(以下、心経という)の内容についてです。心経の中から、私が重視しているフレーズを三つ選び、その内容について記してみます(三つのフレーズのうち、後の二つについての投稿は、別途とします)。


1.はじめに

(1)写経と解説書

①写経

私は、心経の読経、写経、内容の勉強を3年ほど前から、朝のルーティンとして、ほぼ毎日続けています。
写経は、一日2行のペースで、累計76枚になりました(写真1.)

写真1.般若心経の写経:76枚目のもの


②解説書(愛読書)

一日の写経2行分について、写経後にいつもの解説書(以下、愛読書*という)の「解説」と「今日のヒント(法話)」を読み、内容の理解に努めています。
これを繰り返していますが、最近、やっと大体の意味がわかってきたようです。(奥が深いので、まだ通過点と思っています)。そこで、この愛読書をベースにして、この記事をまとめてみました。
*:愛読書:「ボールペン 般若心経 練習帖」(枡野俊明 監修)

(2)心経の「経題」について(以下、愛読書より)

心経は、釈迦の教えの真髄」で「心を豊かにするヒントがいっぱい」とあります。その経題は、次の通りです。

<経題:「摩訶般若波羅蜜多心経」とは>

この訳は、「彼岸(波羅蜜多)へ渡る 偉大な(摩訶) 智慧(般若)の教え」。注目すべきは、「般若」とは「智慧」という意味で、『仏教での智慧とは、「空(くう)の考え方を理解すること』というところです。

<私見>

心経の理解には、「空」の考え方を理解することが重要なポイントになると思っています。


2.重視しているフレーズ

心経の本文262文字の中から、私が重視するフレーズを三つ選びました。それぞれの内容・解釈は、後述します。なお、今回の投稿は、①についてで、②と③については、別途投稿予定です。

    ①照見五蘊皆空 度一切苦厄  ・・・写経・本文の1~2行目

 ②色即是空 空即是色     ・・・写経・本文の3行目

 ③能除一切苦 真実不虚    ・・・写経・本文の14行目


3.「照見五蘊皆空 度一切苦厄」について

(1)愛読書による「訳」と「解説」

愛読書による、「照見五蘊皆空度一切苦厄」の訳と解説は、次の通りです。
<訳>
私たちの肉体も精神も、皆空(=実体がないこと*)であることがわかって、一切の苦しみや災難を克服し、安らかな心へと渡したのです。
*:「実体がない」は直訳的で、下記の解説では意訳的に解釈しています。
<解説>
照見:仏の智慧によって真実を見極めること。
五蘊(おん):五つの蘊(色、受、想、行、識)の機能が集まったもの。
 つまり、人間の身体のこと。色:目に見えるもので肉体を意味する。そのほかの四つの  蘊は心の働きを表す。

皆空:私たちの身体*は、一時もとどまることなく変化を続けています。
これを「無常」といいます。身体は、ほかのものと無関係に単独では存在することができません。これが「無我」です。
この「無常無我」を「」と呼びます
*:後の経文で、身体だけでなく、「諸法」(すべて:森羅万象)と拡大しています。

・度一切苦厄:この道理(空)がわかったとき、すべての苦しみや災難から解放されるのです。

<私見>
愛読書の解説で注目したのは、「空=無常・無我」と捉えている点です。(ここがポイント)。3年ほど前に愛読書を入手し、この考えに初めて出合い、空の解釈の明解さに驚きました。それまで読んだ解説書では、「実体がない」という訳で深い意味があるようですが、よく理解できませんでした。まさに、「一種の謎」です。

4.「空」の解釈について

(1)他の解説書の「空」について
心経の解説書は山ほどあると言われいわれ、手元にあるだけでも10数冊もあります。(写真2.・・・文末に掲載

愛読書では、「空=無常・無我」と解釈していますが、他の解説書では、どう解釈しているかを調べてみました。(解説書の中には、「空」について、「縁起」、「無自性」、「因縁仮和合」などと説明しており、諸説あるようです)。
その結果、私の考えでは、「空」の訳(解説も含め)は、大体次の二つとなります。

 A:「空=実体がない・・・直訳的(ほとんどの解説書)
 B:「空=無常・無我・・・意訳的(愛読書で用いている)

(2)「空」の二つの解釈について
「空」の解釈には、前述のように、A、Bの異なる二つの解釈があると考えましたが、なぜ二つの解釈があるのか? 他の解説書やネットで調べました。

予備知識として、下記があります。
①釈迦(約2600年前)の教えを簡潔にまとめたといわれる、「三法印」があります。「諸行無常、諸法無我、涅槃寂静」の3種を三法印と称し、仏教の中心思想としています。
②般若心経は、釈迦没後、500年ほど経ってから、弟子たちが作ったといわれています。
③仏教における「空」の原語は、サンスクリット語で、「シューニャ」で、「・・・を欠いているという意味。また、「シューニャ」は、「何もない状態」を意味する。

<私の推理>
①時系列的に考えると、般若心経の作者は、釈迦の説いた「三法印」のうち、「諸行無常、諸法無我」の二つを「空」と表現したのではないか?
なお、「実体がない」は、上記③の原語の意味を直訳したものと考えられる。
②「初めに結論ありき」のように、「五蘊皆空」と出てくるが、この後に「空」の文字は、6か所も使われている。これらの各フレーズ内での「空」の意味を考え、互いの整合性を考えれば、「空=無常・無我」が導かれるのではないか?

さらに、ネットで次の記述を見つけ、同じ考えがあることを知りました。
諸行無常と諸法無我を一言で言い表して「空」ですものごとの在り様、その存在法則を「空」と呼んでいるのです。』(YAHOO知恵袋)

また、他の解説書(枡野俊明「心訳 般若心経」)によれば、前記のAとBを結びつける説明として、『つねに変わり続け、単独では存在できない、ということは、「実体がない」すなわち「空」であるということです』とあります。

(3)さらに解説書を調べる
前記Bのような解釈と同様な解釈が他の解説書にないかさらに探してみました。
その結果、1年ほど前に入手した、松原泰道「わたしの般若心経」に次のような「意訳」を見つけました!!
<意訳>
『「観音様は、この世にあるすべてが、どうしてそのように存在するのか、その存在の原理を見きわめようと、深遠な観察の修行を積み、ついにその修行を究めた。そして、一切の存在はすべて「空」であるとの真理をさとって、苦しみの原因を解決することができた』。(中略)
『「空の真理」とは、まず、すべてはつねに移り変わり、永遠な存在は一つもなく、すべて「無常の存在」である真実。次に、すべての存在は、そのものだけで他と孤立して存在できない、みな他とかかわりあって、はじめて存在が可能な「無我の存在」である真実。この二つを総括するのが、空の真理にほかならない』。

この意訳は、愛読書の解釈と同じです。

5.まとめ

①愛読書の「空=無常・無我」という解釈が理解しやすいと考えています。

②愛読書は、「空=無常・無我」という解釈を全編を通して展開しているので、わかりやすく、よい解説書と考えています。

 <「空」の展開例>

『「無常・無我」の視点が苦しみをプラスに変える

『般若心経では、「無常」を虚無的に捉えていません。移り変わるがゆえに美しく、また尊いと考え、プラス思考で積極的に生きることを説いています。

また、「無我」は、人間を含めたすべての存在は、他の存在と無関係ではないという考えです』。

③「すべては無常・無我である」という視点でものを考えると、一歩距離を置いて別の見方ができ、心穏やかになると感じています。

④心経の一字一句には、奥深い意味があります。心が豊かになることを願って、これからも愛読書を繰り返し読んでいこうと思っています。


写真2.手元にある般若心経の解説書です。大半は、ここ数年間に
入手したものです。最も古いものは、1年生の終わりころ
前橋で買ったものがあります。