以前に紹介した掛け軸製作の基本である、作品の「表装:裏打ち」の技法と、掛け軸製作技法について簡単に紹介します。
1.作品の制作半切の画仙紙、全紙の和紙など作品に応じて選ぶ
表装する場合、墨汁は使わず、墨を摺ります。
2.裏打ちの手順:作業道具、材料、手順
裏打ち紙は美濃紙(肌裏用)、美須紙(増裏用)、宇田紙(総
裏用)の3種類を使用
3.作品を作業台にうつ伏せに載せ、噴霧器で湿りを与える。
4.あらかじめ練った糊を刷毛で裏打ち紙に塗り、掛け竹で持ち上げて本紙(作品)に裏打ち紙を打つ。
5.撫ぜ刷毛で、空気を抜きながら裏打ち紙を軽く撫ぜて、しわを無くす。シュロ刷毛でしっかりと裏打ち紙を作品に密着させる。
6.2~3日乾燥させてから、増裏紙を同様の方法で裏打ち推する。
7.裂地の裏打ち:裂地はそのままだとしわの原因になるので、裂地の両端に3cmほどの切り込みを入れて、自由度を与え、いったん湿らせて、乾燥後に裏打ちする。
9.作品の化粧立ち:本紙(作品)の裏打ち紙のはみだし部分をカットする。作品に合わせて、長さ幅、直角度に注意して周囲をカットする。
10.裏打ちした裂地も作品と同じように、必要長さにカットします。
裂地は、天地(掛け軸の上と下の部分)、柱(掛け軸の両端)、一文字(作品の上部と下部に
飾りとして付ける)の3つの部分で構成されます。
最初に作品の上下に一文字を切り継ぎ(ボンドで作品と裂地を繋ぐ)します。
次に作品の両端に柱を切り継ぎます。最後に天(上部)と地(下部)を一文字と柱を合わせて
切り継ぎます。地の部分も同じです。
この時裂地に模様のある場合は、柱と天地の模様が揃うように切り継ぎます。(ここの作業
が一番難しい)
11.上の写真で右端が本紙と一文字、柱、天地を切り継ぎしたものです。
12.整形、耳折り:天地と柱全体をバランスよくカット(柱の幅を決める)して、両端を約3ミリほどお
ら側に折り曲げて、ボンドで接着する。(上図左)
13.総裏打ち:本紙と裂地を繋ぎ合わせた後、裏側全体に少し厚めの和紙(宇田紙)を張り付けて
全体を補強する。この作業の前に、軸袋(掛け軸の軸棒を包み込む部分)、八双袋(掛け軸の
上部)を取り付けて置く。(下の写真:左八双袋、右軸袋)
14.乾燥、裏摺り、耳切:十分乾燥後、裏側全体にはロウを塗って、数珠で横に擦り、裏側を柔ら
かくします。これは掛け軸を巻いた時に、折れ曲がらないようにするための重要な工程です。
15.最後は軸と八双を取り付け、八双部に釻(かん:掛け緒を付ける部分)、を付け、掛け緒、巻緒
を取り付けて完成です。
16.完成したら、自分が作成したものという意味で、落款印を押します。落款印も自分で篆刻で作
成しました。
以上くだらないものを紹介しましたが読み捨ててください。掛け軸道場に通って習得したものを
マニュアル化して忘れないようにしています。
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野尻様、投稿有難う。
返信削除写真と文章の配置の仕方、また、メールします。
何回でも、題名を変えて投稿してみて下さい。
無駄スペースばかりで纏まりが有りません。色々トライします。
削除素晴らしい趣味をお持ちですね。表装の技法は独学ですか?それとも誰かに師事されたのですか?若い頃から毛筆の便りを頂いておりますしたので、好書家であることは承知していましたが、掛け軸まで仕上げる造形に拍手喝采したいと思います。いつの日か「家康の家訓」が作品となってご披露されることを楽しみにしております。
返信削除掛軸製作は前からやりたいと思っていましたが、現役中はなかなか時間的に集中できないので、仕事を辞めてから東京の大塚にある、マスミという掛け軸の材料や和紙など幅広く扱う店が有り、ここでは書道教室、掛け軸教室、そのたの趣味教室を開いていたので、2年半ほど道場に通いました。ここで学んだことをメモして手順書に纏め、一通りマスターしたので、教室へ通うのも遠いので、自分で作業台等を作り「アトリエを構えて」作業しています。月に2回の教室では作業が進まないので、家で出来るようにしました。
削除投稿ありがとうございます。「表装:裏打ち」は想像していた以上に高度で専門的な作業で驚きました。「貼る」➡「打つ」と言うのも技法のすごさを感じますし、一朝一夕には習得できない奥深いものでしょう。書き上げた納得の書を掛け軸にするには、十分な段取りをして失敗の許されない作業で緊張感が伝わってきます。いまだに分からないことは、長い紙に書をかいていく過程で中ほどの字を書くとき、どのような姿勢になるか?です。写真で最後の「風」の場合は座っておられるが、中ほどの「一点」などを書くときは、紙を跨ぐ、紙の上に乗る、紙を巻いて戻しながら、など考えられますが分かりません。教えてください。もし他所で掛け軸を拝見する機会があったら、私は内緒で裏側をこっそり見るでしょう。
返信削除前に作品を載せた時に、石井さんのコメントにどのように書いたり、掛け軸にしたりするのかとの意見が寄せられたように記憶しています。それで今回の投稿を試みました。大きな条幅とか、3/4幅の(全幅、とか半切とか、3/4幅など紙の大きさを呼びます)紙に書くときは、またいで書くことが多いです。紙は常に広げたままです。幅の広い書を書くときは苦労します。またいで半腰で書きます。
削除やっぱりそうでしたか! 幅広で長い紙に書くときに跨ぐのって体勢的に大変ですね。これで疑問が解けました。改めて素晴らしい投稿ありがとうございます。
削除投稿お疲れ様でした。道具の多いのに驚きました。これらをうまく使いこなすのは大変でしょうね。本格的な良い趣味と思いました。まさにプロ級ですか?
返信削除掛け軸道場に通って習得されたとのこと。私も先生のいない水彩画クラブに入会して間もなく3年にになりますが、あまり自己流ではいけないと思い、1月から近くの絵画教室に入会し、月2回通っています。今までと少し違った技法を勉強中です。無心になれる趣味はよいですね。
何事にも「師」は必要ですね。掛け軸道場では、いわゆる表装とか襖の制作を専門に仕事をしている本職の「表装師」でした。教室では、表装を趣味にしている女性ばかりの教室に、一人男性が混じって2年半学びました。お金のかかる趣味で、道具、紙、裏打ち紙(和紙)、裂地(きれじ)など値段が高いものばかりです。今は今年の展示会に出展する作品の「書」の練習中です。安い紙に思う存分字の練習をしています。特に草書文字は最近はあまり使わないので、書き方の手法も慣れないので、草書辞典で学んでいます。
削除野尻様、書き直され上手く書けています。
返信削除表装の裏打ちがなされて、作品の見栄えが格段に良くなるそうですね。
紙を張り合わせる根気の要る作業で仕上げられた野尻君の丁寧な見事な作品に乾杯。
作品とコメントをうまくバランスよく書き込む方法が解りません。無駄なスペースを使ってしまい、おさまりが悪いです。何時も写真の編集をWordを使って行っていますが、この方法とは違うので苦労しています。豊島氏は上手に載せていますね。
削除野尻様
削除私が行っている、写真と写真へのコメント(説明)の入れ方を後ほどメールします。imasannにも同時にメールを送りチェックしてもらうようにします。
写真の一枚だけでも練習(題名:「テスト」として、投稿してみらどうでしょうか。なお、メールは少し時間がかかるかもしれません。
投稿時にいつも苦労しているのが、解説文と、写真の配置です。上手くいきません。メールお待ちしています。今さんのコメントも参考にしてみます。
削除メールを昨日送りました。練習投稿してみてくだ。
削除野尻様
返信削除表装・裏打ちなどというものは、素人には無関係なものと思っていましたが、それを習得されたとのこと、驚きです。その手順や、紙の種類、専用の道具、専門用語等から見て大変な作業で、私にもできたらいいとは思いますが、断念せざるを得ません。というのは拙宅にも、祖母の時代に菩提寺の和尚が書いたものがあり、表装したいと思っておりましたが、この投稿を拝見して、とても自分では無理とわかりました。また篆刻は小さなセットを買って、いくつか彫ったものを賀状につかっていますが、野尻さんの印刀3本に対して私は1本です。書・表装・篆刻と総合的にやらねば、自分の気持ちが治まらないのは、芸術家ということでしょう。素晴らしい投稿をを拝見させていただきました。
菩提寺の和尚が書いたものがあるとのこと、大きさが解りませんが、あまり神経質にならず、まず裏打ちだけやってみてはいかがですか。糊と刷毛と和紙が有ればできます。
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