私は81歳の男性で、田舎の辺鄙な山の中で一人暮らしをしております。齢相応に体力は低下し、歩行もゆっくり、多少左手が震える時があり、目の方も乱視、緑内障及び老眼で細かい作業が苦手になってきました。
さて、新コロナウイルス感染が大きな問題となって、テレビをつければ当然のことながらこの問題が報道されております。山の中に住んでいるとはいえ、やはり恐ろしくて息をのむ思いでニュースを見ております。
最前線で奮闘されておられる医療関係者はじめ多くの方々がご苦労されておられる様子に頭が下がります。早く日本全土で収束し、世界的な規模で「終息宣言」を聞きたいものです。「三密をさける」「マスクを着用する」「十分手洗いをする」など基本的な対策をすることは重要ですが、マスクを欲しいと思ってもなかなか購入することが出来ません。私には沢山のマスクは必要ありませんが、どこに行ってもマスク1枚購入出来ませんでした。そこでマスクが買えないなら自分で作ってみよう。自分の縫製技術を試すのにちょうどよいのでは、と内心思ったのです。
「1」計画と準備
自分で使うマスクは自分で作る。外出時そのマスクを着用しても恥ずかしくない程度の見栄えで、自分でも 90%ぐらい納得の出来る様なマスクを作ることを目標とします。
*使用ミシン :ブラザーコンピューターミシン CPS42シリーズ
*アイロン :東芝製
*使用材料
ペーパー:市販の車を拭くウエットペーパーを乾かしたもの。
布巾:台所などで清掃に使うもの。
敷布:手持ちの中で出来るだけ生地の薄いもの。
蒲団カバー:掛け蒲団用のカバー。
枕カバー:100円ショップにある袋型枕カバー。
不要衣類:クリーニング済のスカート。
ダブルガーゼ:2枚合わせにしたガーゼ(但し品切れで長期間購入できなかった)
平ゴム:手持ちのもの。
「2」製作(初期段階の失敗例)
1)マスクが形にならない
左上は市販の紙製マスクである。これを参考にして材料の紙を折ったが、なかなか寸法が合わず失敗。材料の紙は腰が弱く、この時点で使用をあきらめた。
2)プリーツが一つ足りない。
試行錯誤の末少しばかり上手く出来たと思ったが、織り目(プリーツ)が一つ足りない。見た目は少しマスクらしくなって来た。丸い細いゴムひもが入手できないので体裁悪いが平ゴムを仮付けした。
3)トラブル発生
やわらかい生地を使い返し縫いをしたら送り歯の所に噛みこんでしまった。引っ張ってもビクともしない。修理に出さなければならないか? このマスクプロジェクトも活動を中断しなければならないかと暗澹たる気持ちになった。思い切って大きなネジを2本外してプレートを外したら、何とか布を取る事が出来た。簡単に解決した様に見えるが、普通のドライバーは上から使えない。10円硬貨を使って見たが、手は震えるばかりで上手くいかない。やっとの思いでプレートを外したら、今度は修復が難しくて。時間ばかりかかってしまった。それでも何とか修復出来て安堵した。
4)出来上がりのゆがみ
きれいな長方形でなくゆがんでいる。また左右ゴム通し部の縫い代が極端に異なる。
寸法も幅が小さくなってしまった。良いところなし。
5)ちじれ縫い発生
やわらかい生地でアイロンが効かない。急いで縫ったら左下にちじれが生じた。最後の工程で失敗して修正不可。
結局縫った所を全部ほどいてやりなおした。もっと慎重に!!
6)再度ミシントラブル
下糸が無くなったのでボビンを交換した。どこでどう間違えたか突然縫えなくなってしまった。サービス員に来てもらい修理をしてもらった。糸の掛け間違いらしく、基本動作が出来ていなかった。
「3」反省
マスクの製作は自分の縫製技術にちょうどよい課題と思ったが、現実は大違いで自分の未熟さを知らされた。マスクの作り方の基本を理解してないことも大きな問題点である。そこでマスクの作り方の動画を繰り返し見て勉強した。
動画では凄腕の女性が親切に教えてくれるし、その技術は見事であり感心するばかり。一方テレビなどでマスク姿を見ていて分かったが、マスクも
「プリーツ型」「立体型」「箱型」がある。箱型も多数紹介されていたが、これは好みでないので製作しないことにした。
動画で学んだことは
*必ず型紙を使うこと。
*アイロンを上手に使い、予め縫いやすい形に整えること。
*凄腕先生と競争しないで、ミシンはゆっくり、失敗しない様に操作する。
*自分で考えて、縫う距離を出来るだけ短く、シンプルな構造にする。
*段取替えをしたときは必ず試し縫いをすること。上級者も心がけていることらしい。
*作業環境はきちんと整理すること。
非常にまずい状態である。使わない物は上に置かない。アイロンは広い所に置き換えた。
型紙を作った
型紙1➡プリーツ型用 型紙2➡立体型(You Tubeより) 型紙3➡2の改良型
型紙4➡3の改良型
型紙5➡4の改良型(これが一番良い) 型紙6➡100円ショップで入手(上手く使えない)
「4」製作
動画に従いかつ反省点を頭に入れて作業を進めた。期せずして作業のスピードも上がって来た。
時間が掛かるのは改善点を考える時である。例えばゴム通し穴を簡単に作る。ほつれを上手く処理する。ことに苦心した。
少しづつ改良を加えて作ったマスクを
時系列に左上から右下へと並べて見た。一つ一つが設計変更して、どこかが違っている。どのように違っているか大体わかる。
比較的無難に出来たものを選んでみました。右の一番下がダブルガーゼで作ったもので一番上手に出来たもの。見た目は大差ないが肌への優しさ、全体のフィット感が良い。
着用状態の確認・評価(6例のみ)
柄物は少し恥ずかしいが、出来としては悪くない。一番良いのはダブルガーゼで作った右下のマスクである。微妙な違いであるが顔を柔らかく、しかもしっかり包んでいる。評価は80点かな。
「5」感想や疑問
1)店頭からマスクが消えてしまった時期が相当長く続きましたが、皆様はどのようにしてマスクを調達されたでしょうか?
2)増産している。新規に生産を開始した。というニュースが流れたが、一向に店頭にはマスクは並ばなかった。生産数が足りないのか、どこかで買い占めたのか?
3)家電メーカー・
シャープもマスク生産を開始しオンライン販売するとのことで、私も申し込んだ。購入希望者多く、抽選とのこと。初回の倍率は117倍であった。販売というのは欲しい人に品物を無理なく供給することが出来て初めて販売と言えるのではないだろうか?
こんな「猫じゃらし」みたいなことは止めて欲しい。
4)最近(5月27日)、100円ショップDAISOで50枚入りマスクを売っていた。深い考えもなく取りあえず1箱購入した。次に隣接するスーパー(MAXVALU)に行ったら、ここでも40枚入りマスクを売っていた。何とここは数量制限なしと張り紙まであった。勢いでここでも1箱買ってしまった。
都合90枚のマスクを買ったことになるが、状況の変化の激しさにただ驚いている。
5)政府は以前から各家庭に布製マスク2枚を配布すると決定し、東京から配布始めたらしい。我が地方は5月31日現在未配達。楽に90枚も購入できたし、自分でも製作出来る様になったので、
通称アベノマスクはどうでもよくなった。この施策を考えた人は、年賀状を届けるスピードでマスクも配布出来ると考えたのだろうか?
6)今回マスクを作ってみて、自分の縫製技術が未熟であることが分かった。一方時間をかけて試行錯誤、根気よく作業したお蔭で随分勉強にもなりました。
***** おわり *****