私が暮らす 老人ホーム「 ライフケアガーデン熱川」の本棚に「 QC 7つ道具」 という本があることは すでに ご紹介済みですが、 その後 誰かが手にとってみた 様子もなくせっかくの本も少し寂しそうに見えます。そこで私が透析治療を受けて いる過程でどうも納得できない 疑問点について 「QC7つ道具」 の本を参考にして その疑問点の解明を試みました。
「1」疑問点
1-1) 下記のように 1日8回 血圧測定をしております。(以前紹介済)
1-2)血圧(上) の月別平均値の推移
(グラフ1)
1-3)月別平均値のグラフ 註:今後 血圧(上)についてのみ 検討します。
1-4)疑問点
a ) ②朝食前 の12月の 平均値 146 が透析室で到着し ベッドに横になる
1時間15分の間に ③透析前の平均値が100までなぜ 急激に下がるのか?
b ) ③透析後の血圧 104 が老人ホームに戻っての ④昼食前(約30分後)に
127 までなぜ上昇するのか?(これは医学的にも説明されているので
今回は割愛します。)
②朝食前 146 ➡ ③透析前 100
(短時間で146➡100と余りにも大きく血圧が変化するのはなぜか?)
1-5)問題点
③透析前 100 の時の 最大値115 最小値90
④透析後 104 の時の 最大値113 最小値95 です。(手持ち資料で)
ここで バラツキ について注目してみ ます。
透析前➡ 透析後までの間のバラツキは 最小値で 90 ~ 95 です。
血圧(上)がこの最小値近辺に近づくと、透析技師の方が大変心配をされます。
具体的には 頭痛、吐き気、 胸くるしさ、ひいては一時的な意識消滅、などを
ひきおこすそうです。ですから途中で気分は悪くないかと執拗に私に確認を
されるのです。
血圧が下がってくると このような障害が非常に起こりやすいことが問題です。
透析中の血圧低下は 透析回路による体外循環の影響や 除水による循環血液量の
低下によって引き起こされると医学的に説明されています。 すなわち透析を
始めてから血圧は下がっても何ら不思議はないのです。さらに透析が終わると
浸透圧によって体内の水分が血管の中へ戻っていくので徐々に血圧は上がって
くると説明されています。
繰り返しになりますが、朝食が終わり 透析室に 向かい ベッドに横になった
だけで血圧が100まで大きく下がるのは何故か 説明できないのが問題です。
「2」特性要因図
特性要因図とは、「 問題とする特性(結果)と、それに影響を及ぼしていると
思われる要因(原因)との関連を整理して、魚の骨のような図に体系的に
まとめたもの」とのことです。
そこで 「透析前の血圧が低い」という結果に対して、何が原因か調べるために
特性要因図を作成してみました。先入観を持たずに思いつくままに書いたのが
上の特性要因図です。
「3」重要な要因
特性要因図は書けましたが 何が重要な要因かちょっと見当がつきません。 そこで
「QC 7 つ道具」を見ると次のように書いてありました。
1) データを取って決める
2) 話し合いで決める
3) 投票で決める とのことです。
どうやら 決定的な決め手はないようです。実際に特性要因図を見ても決定的な
ものがないので、 人の意見も 加味して測定方法に重要な要因があると考えました。
そこで測定方法について②朝食前と③透析前とで どこが異なるか 整理をして
みました。
「4」実験
透析治療中に実験は出来ないので、老人ホームで次の実験をしました。
4-1)実験1
血圧測定器 1種類 (手首式)で 測定姿勢を手首とベッドに交互に
変えて血圧測定した。・・測定 姿勢による違い( 表1)(グラフ1)
(表1)
☝
(バラツキ= 156-119=37)☚ 非常に大きい(実験4と比較)
註)血圧計は手首式しかなかったので、これは予備実験とします。
(グラフ2)
グラフを書くまでもなく 姿勢の違いによる血圧の変化が一目瞭然で
分かってきた。(グラフを書くのも QC の勉強と思って書いた)
いずれにせよ 大きな差が出るので今後 本格的な実験に取り掛かる
ことにした。 実験 1は予備実験と考える。
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透析室と同じ条件にするためにはどうしても 上腕式血圧計が必要に
なったので 老人ホームの看護室の血圧計(手動圧縮)を 借用した。
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これからが本格的な実験です。
4-2)実験2
血圧測定器2種類での血圧測定。(測定具は下写真のもの使用、
姿勢は両方供椅子に座った状態)・・測定具による違い (表2)
(表2)
使用血圧計と測定風景
註)上腕式血圧計(手動圧縮)を看護室から借用した。
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看護室の血圧計は力が必要で 私には不向きだったので、新たに
自分でバッテリー式圧縮の血圧計を購入して実験を続けました。
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4-3)実験3
2種類の血圧計と測定姿勢を変えて血圧測定。
手首式は椅子で、上腕式はベッドに寝た、状態・・・
すなわち 血圧計と測定姿勢を複合的に変えた場合
②朝食前に相当 ③透析前に相当
(表3) ☟ ☟
使用血圧計と 測定 風景
註)上腕式(バッテリー駆動)を自己負担で購入した。
4-4)実験4
血圧計を 上腕式(バッテリー駆動)として 姿勢のみを椅子 及び
ベッドと変えて 測定。 実験 1と同じ方法であるが 血圧計の
信頼度が高く、また測定は 連続して30回行い 血圧計に記録
されたデータを読み取った。すなわち 姿勢を変えたのは
1回だけである。
(表4)
☝
(バラツキ=114-101=13) ☚ 非常に小さい(実験1と比較)
「5」考察
実験結果を分かりやすくまとめました。
(表5)
5-1)実験3は②朝食前血圧モデルと③ 透析前血圧モデルと考える
ことができます。
5-2)この表の数値を使って計算すると
(朝食前 平均) ー( 透析前 平均)=41 ≒ (29+10)となる。
すなわち「透析前血圧が低い」のは血圧計の種類(測定箇所) と 測定時の
姿勢の2つの要因により 40ぐらいの差が出ることがわかった。したがって
「 透析前 血圧が低い」のは何ら 不思議ではなく、当然の
ことであることがはっきり分かりました。
(註)グラフ1で 12月の平均値の差は46、11月は41で上記の推論に
限りなく近似している。
「6」結果
透析前に血圧がさがるのは何ら不思議ではない。理由は
血圧計の種類(測定箇所)及び測定姿勢が変わるから。
です。
それでは 私の場合、 あなたは低血圧か? と問われれば、何とも言えないと
いうのが正解だと思います。
日本透析医学会のガイドラインでは
透析患者の血圧の目安は、透析開始前の血圧が140/90mmHg未満です。これは
絶対的な値ではなく、透析中に血圧に注意しましょうという目安の数値です。
一方 低血圧の基準値はインターネットで調べた結果 下記の通りです。
低血圧の基準値は明確に示されていませんが、一般的に収縮期血圧
(最高血圧)が100mmHg未満の場合に低血圧と診断されます。
上記 2つの 基準値を 私の血圧測定値に適用しても何ともはっきりしません。
その理由は 血圧計の種類と測定箇所、及び測定時の姿勢を明記しなければ
比較出来ないからです。ある専門家が上腕の血圧と手首の血圧は 血管の
状態も異なるので、全く別物である。 とさえ言っています。
血圧を論じる時は測定方法をまず明確にするべきだと考えます 。
長くなりましたが
**** おわり ****
凄いですね。「QC七つ道具」のうち四つ使いましたね。昨年の11月30日に「ヒストグラム」12月5日に「散布図」今年1月21日に「特性要因図」「グラフ」残り三つも使ってみますか?
返信削除血圧ですが、食事を摂ると消化・吸収により心臓から送り出される血液量(心拍出量)が増えるので食事前より血圧が高いと言われていますが、正常なら1時間程で元に戻る様です。ですから透析は食事後1時間過ぎでないでしょうか? 測定器による差異、測定箇所による差異、測定姿勢による差異などあり、石井さんの結論が正しいと私もそう思います。測定する上腕の位置と心臓の高さを変えても変わるし、測定中の呼吸数を変えても変わるし楽しんで測定しています。
コメントありがとうございます。
返信削除QC 七つ道具、 この次は 管理図に入りたいと思います。また アドバイス よろしくお願いします。簡単な棒グラフ も 目盛を変えたり、 文字を書き入れたり いろいろ 進化させると、 とても勉強になります。自分で分かっているつもりでも案外知らないことが多いです。基礎をきちんと学ぶことの大切さが分かりました。
血圧は本当に捉えどころがなく難しいです。 集団として捉え 判断することが大切だと思いますが、公表されている 正常値に測定方法などの条件が書いていなくて本当に 片手落ちだと不思議に思います。それから 便利に使われている 手首式の血圧計はバラツキが大きく 驚きます。 あまり信用できません。 きれいな富士山の写真を拝見しました。心が洗われる思いがします。自宅近くに あのような撮影スポットがあるなんて本当に恵まれていますね。羨ましい限りです。それでは またよろしくお願いします。
血圧データを整理された結果、血圧には全く問題がなく良かったですね。
返信削除透析前の血圧100も問題ないと言うことですね。
血圧計と測定位置の違いが大きく、2つを同じレベルで扱うのは間違いですね。上腕式の血圧で測る必要がありますね。
私も朝起きた時は、95ぐらいです。ゴルフ場で測ったら大体この値です。
通常、病院で図った時も105ぐらいの時は良くあります。
赤血球も少なめなので、病院の先生に貧血気味と言っても、血圧が100あれば正常と言われます。血圧90以下が低血圧なのですね。
また、血圧が高い友人方は、血圧が高い人より低い方が安全と言われます。
以前、テレビで東北大学病院の透析室で透析中に運動をしていたのを見た記憶があります。透析前に軽く体操をすれば血圧が少し上がると思うのですが、どうなんでしょうか。
それにしても透析の管理は上手にされていますね。
コメントありがとうございます。 透析前の血圧 100は理由が はっきりして心配しなくなりました。 おっしゃる通り 血圧計(測定箇所)の違い、姿勢の違い、で大きく変化します。血圧正常値についてたくさんの学者が述べていますが、測定条件を明示しないのは全くの片手落ちです。 同じレベルで 比較するなら 測定条件を同じにするべきです。 誤った見方を避けるには 自分で勉強する必要がありますね。 東北大学病院の体操の件はちょっと 信じられません。透析中 は拘束されていて運動できないと思います。 しかし 一般論として 体操をすると どの程度 血圧が上昇するのかということは実験する価値がありますね。トライしてみます。 私の H 先生はあまり血圧の薬を使いたがりません。透析技師は血圧が下がると気分悪くないか?我慢しないでくださいと言います。 変なもので何回も聞かれると本当に気分が悪いような感じになります。 しかし 自分を信じて対処するしかありません。 また色々と教えてください。
返信削除毎日の生活において、本当に時間を大切に過ごしておられることがヒシヒシと伝わってくるように思います。研究者の姿勢というのも感じます。石井さんのこの一連の行動を見ていると、自分はやはり研究や実験等をやるような仕事には向いていないことが、よくわかりました。
返信削除私は血圧が高いのに、血圧は測りません。しかしこの石井さんの研究結果で、上腕と手首で測った血圧は、比較できないことがよくわかりました。
いつも思いますが、透析を受けている立場で、精神は高名な禅僧のように泰然自若として、何物にも惑わされないような境地におられるように感じています。素晴らしい実証研究を拝見させていただき有難うございました。これからもお元気で頑張ってください。 安楽岡弘久
コメントありがとうございます。
返信削除その後体調はいかがですか? 気にかかっておりました。 コメントを頂いたことはお変わりなくお元気と解釈、 安堵しております。 私も体調は万全とはいかないので、貴殿の大変さがよく分かります。
身に余るお褒めのお言葉をいただき、恐縮です。 私はただ、 暇なだけです。日常の雑事から解放されて自分の時間が一気に増え、その分 やりたいことに 集中できるようになりました。 しかし やることは山積みです。 ブログを自分史のつもりで書くこと、 そして 家族への引き継ぎ書、 写真の整理、 不要品の売却、 株取引と資産運用、・・・と時間がいくらあっても 足りません。
貴殿は 血圧測定されないとか、 それも一つのやり方かもしれません。 しかし 記録を取らなくても時々 測定して自分の血圧 のレベルを知っておく方が良いかと思います。
こうしてコメント欄で情報交換できることは本当に嬉しいことです。お互いに頑張りましょう。 よろしくお願いします。