2023年7月19日水曜日

仲間の展示会用の作品:掛軸製作 2点

 コメントするのにいつも名前を忘れてしまいます。今後気をつけます。野尻貞夫

 前にも一度掛軸の制作に関して投稿しましたが、今回の作品について改めて制作のプロセスを記述いたします。必要なければ飛ばして作品のみ見てください。

1、今回の題字は、まず1点は、福沢諭吉翁の書を「臨書」しました。上手く対象の書と同じに書けるかが課題です。選んだ理由は:大変すばらしく気に入ったからです。

 2点目は、竹久夢二の読んだ五、七、五、七、七の短歌です。夢二がモデルで、恋人の彦乃と共に、湯涌温泉に療養にきて読んだ句のようです。読売新聞の日曜版に掲載されたもので、気に入ったのでかな文字で書いてみました。

2.まず字を書くところから始まりますが、気に入るような文字配列や、全体のバランスの取れた題字にたどり着くまでに、相当な時間を要します。書く紙もかなり使います。


3.書いた文字は皺だらけです。裏返して噴霧器で霧吹きして皺を延ばし、糊の付いた和紙を張り付けます(裏打ち)。この工程を2回繰り返します。当然1回目の裏打ち後、乾燥してから2回目の裏打ちをします(増裏打ち)。


4.作品の裏打ちと同様に、裂地(きれじ)も裏側から2回の裏打ちをします。裏打ち後十分に乾燥してから、必要なサイズにカットします。通常は、天地(上部と下部の裂地)の部分と、両サイド(柱)の部分にカットしておきます。
飾りの一文字、両サイドの柱、中廻し、天地などを順番に作品(本紙)とつなぎ合わせます。つなぎ合わせは約3ミリの幅で、ボンドで張り付けます。本紙と裂地を張り合わせたものを下図に示します。


5.上部の八双(はっそう)と下部の軸棒(じくぼう)をボンドで包み込みます。八双及び軸棒はあらかじめ長さ及び両端の軸先(じくさき)を取り付けておきます。上部に「釻(かん)」を取り付け、これに掛緒(かけお)、と巻緒(まきお)を取り付けます。完成したら上部に「引首印」、左サイドに姓名印、雅号印を捺印します。これですべての工程が終了です。

6.完成した掛け軸を表示します。
 以上こまごまと解説しました、掛軸だけ表示したのでは短すぎるので余分なことを書きたしました。適当にスキップして鑑賞してください。写真の配列や位置決めが思うように出来ません。出来たままで表示しました。野尻貞夫 



8 件のコメント:

  1. 早速投稿できてよかったですね。お疲れさまでした。
    野尻さんから、SOSメールを受け取り、考えていましたが、19日朝直接電話でやり取りしました。説明不十分で、imasanさんにお願いしたらとお伝えしました。その後、imasanさんとも電話しましたが、解決したとのことでした。今回の件でお二人と電話で話ができました。やはり肉声が良いですね。

    2点の臨書、いづれも立派で素晴らしいと感じました(内容は?)。
    家内はしばらく書道を習っていますので、見てもらいましたら、「素晴らしい」と感心していました。

    さて、この二つの書の意味ですが、行書でよくわかりません。以前入手した、福沢諭吉の「学問のすすめ」(解説本)がありましたので、少し読んでみようかと思っています。

    また、竹下夢二の短歌については、ネット検索しましたら、「夢二が愛したロマンの湯・湯涌」という記事の中に、「湯涌なる 山ふところの 小春日和に 眼閉ち”死なむと きみのいうなり」とありました。
    明治の終わりから昭和にかけて、数多くの美人画を残した竹下夢二が滞在し、こう詠んだのが「金沢の奥座敷」といわれる湯涌温泉だ・・・。とありました。大正ロマンですね。

    今後の書道のご精進を期待しています。

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    1. 貴兄には大変お手数をお掛けしてしまい申し訳なく思っています。耳が悪くて、補聴器をつけていてもきちんと聴き取れないことがあり、迷惑を掛けてしまいます。さて解説をつける予定でしたが、上手く載せられず失礼しました。書き下し文は、「四海真に知る徳必ず隣り有るを 自由の在る所の里は乃(すなわ)ち仁なり 聞くならく北米華旗の國には 夙(つと)に西より来りて帰化する人有りと」と読むようです。竹久夢二の歌は「湯涌なる山ふところの小春日に眼閉じ(ちに点々 ”)死なむときみのいふなり」という歌で、モデルで恋人の彦乃と湯涌温泉に来て療養している時の歌のようです。諭吉の書は臨書、夢二の書は「かな文字で書きました」
      湯 涌 那 流 山 布 登 古 路 能 小 春 日 尓
      眼 閉 ち 死 那 無 登 き み の い ふ 那 利
      上記のかな文字で書いてみました。

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  2. 掛け軸制作ご苦労様です。
    それにしても故人の書を読み、それに倣い自分の字で書を作成するまでの下書きの長き鍛錬。
    書を書いてから2度の裏打ちまでして、その周囲に貼り付ける裂地まで裏打ちし乾燥してまた裁断、貼り付けと気の遠くなるような手間をかけて掛け掛け軸制作の根気には敬服します。今の私には出来ない。
    完成した作品は努力の賜物です。
    竹下夢二の短歌には物語があります。
    「今、このまま目を閉じて死んでもかなわない。」と言ったのは湯桶温泉を一緒に旅した彼女の言葉で、感じ入るとはロマンチストですね。
    元気がみなぎって見えます。

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    1. 竹久夢二の絵や詩は好きな部類の一つです。この歌は、読売新聞の日曜版に(令和4年12月4日)掲載されたもので、ロマンチックだなと感じたので、カナ文字で書いてみようと挑戦しました。山はモデルで恋人の彦乃の「秘密の呼び名」でもあったとのコメントが有りました。かな文字の場合、現代仮名遣いではなく、古いかな文字をよく使います。文字の流れが美しく見えるように工夫して書いてみました。

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  3. 素敵な玉筆拝見いたしました。まず掛け軸に完成するまでのご苦労が尋常ではないことに心から敬服いたします。

    福沢諭吉の臨書は、力強く格調高い書風で,ご自身が納得されるまで、何度も書き直したことと推察致します。竹久夢二の短歌の方はむしろ逆で文学的匂いがするわけですが、その違いもよく表現されておられるように思います。生意気な感想ですが、これで精一杯です。

    今後ともご精進されて、素晴らしい作品をご披露ください。

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  4. 見て頂いてありがとうございます。福沢諭吉の書は、素晴らしい書だなと感じ、臨書して見たくなり書いてみました。なかなか思うように書けませんでしたが、全体のバランスを重視して書き上げましは。夢二の歌は私の好きな部類です。かな文字がうまく書けませんでした。

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  5. コメント遅くなりました。最近は、書類作成以外は殆どスマホで済ませているので、pcを開く機会が少なくなったこともあり、加えてスマホを  AndroidからIphoneに乗り換えたために、Lineや電話帳などの移転に手間取ってたことも言い訳の一つです。
    本題のコメントです。与えられた字数を決められた紙面にバランス良く配置し、しかも、字の大きさを微妙に変えて躍動感を得て生きています。素晴らしいですね。掛け軸に仕上げる工程にも色々と細かい配慮があるんでしょうね。中国で購入した掛け軸は糊に虫が湧き、紙がボロボロになり破棄しましたよ。これからも良い作品を期待しています。

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  6. 暑い日が続いていますがお元気のことと存じます。小生もパソコンは2階に置いてあるので、時々さぼって開けるのが遅くなってしまうことが有ります。今朝も見損なっていて、豊島氏からメールが届き貴兄のコメントが入っているとの連絡を受けてしまいました。豊島さんありがとうございます。コメントありがとうございます、思うように字が書けませんでしたがバランスを重視して妥協しました。中国で購入の掛軸。もったいないですね、最近は化学糊を使って裏打ちをするので比較的虫などがつかないようです。今回の掛軸では、裂地(きれじ)に安価な生地を使ったのですが、やはり安っぽくなってしまいました。ちなみに裂地の値段は1尺3千円~千円以下のものまであり、仕上がりで重みが違ってきます。野尻貞夫

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